自然と寄り添う暮らし

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あののぉ vol.43 2017 秋

あののぉ vol.43 2017 秋

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〔お宅紹介〕海のある暮らし。


田んぼにおむすび山。
讃岐の風景が広がる陽だまりの窓辺に
仲の良い兄妹と、その姿を見守るご夫婦。
薪ストーブの炎のように柔らかくあたたかい時間が流れる、自然素材の家を訪ねました。


刻一刻と変わる海の色。繰り返す潮の満ち引き。時折はねる魚や、目線の下を飛ぶトンビ。リビングから眺める景色には自然のものだけが映り、「きっと100年前も、100年後も同じ景色なんですよね。」と奥様が何気なくつぶやきます。その果てしなく雄大な風景とともに暮らす、一軒の平屋を訪ねました。


この海に魅せられて

 隣町にお住まいだったUさんご家族。仁尾町にはワンちゃんとお散歩をしに、よく父母ヶ浜へ訪れていました。一年を通して穏やかな海と「日本の夕陽百選」にも選ばれた遠浅の白い浜をみて、この景色を眺めながら暮らせたら素敵だろうな、と思っていたそうです。当初は他の場所での暮らしを予定していましたが、今の土地が見つかり「ここで暮らせるなら」と、夢を実現させることになりました。ご夫婦が望んだのは、リゾートホテルのような非日常的な空間。この海に魅せられて、Uさんご家族の海のある暮らしがはじまりました。
 玄関ドアを開けると、目線の先には夏の日差しを受けてキラキラと輝く海が迎えてくれます。天井や外壁材など、アプローチから玄関の中までを同じ素材で繋げ、さらに壁いっぱいのガラス窓が内と外の境界をあいまいにしています。開放的な玄関を抜けると、キッチンやダイニングが一体となった広々としたリビングがあります。食事や料理、勉強や団らんなど、家族みんなが集まり、くつろげる場所です。一歩前へ飛び出したリビングは海を望む正面の開口部と、左右の面にも窓を設けたことで、水平線がぐるりと繋がり、家にいながら海の広大さを感じられます。またソファに腰かけると、そこからみえる海の表情の豊かさに驚きます。季節ごとに違う場所から顔をみせる月と太陽。湿気の多い夏は夕日がピンクや紫に変化し、澄んだ空気の冬は、しまなみ街道のシルエットが見えることもあるそうです。「夜ふと起きて、満月が光の道を伸ばしながら水平線に沈む姿を見た時は、こんなに美しい光景があるのかと驚きました。海のある暮らしには慣れましたが、飽きることはありません。」と奥様。


 リビングと海を繋ぐお庭では、お友だちを呼んでテントを張り、子供たちだけでお泊りをした事もあるそうです。目の前の海で自分の手で魚を釣って調理すると、丁寧に骨をよけ残さず食べるようになったり、メスには卵がある事を知ったり、直に体験できるこの上ない食育の場となりました。
 夕暮れ時、砂浜をワンちゃんと散歩するのが日課の奥様と息子さん。学校で遊んだ話や、時には相談事など、面と向かって話しにくい事も大自然の前では素直になれるのだそうです。
 日常の一部となった海は、素晴らしい景色とともに、それを眺める住まい手におおらかな暮らしを与えてくれます。


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〔森里海から No.43〕川市(かわいち)


文・写真 菅 徹夫

以前の「森・里・海から」のコーナーでも紹介した滋賀県高島市新旭町針江地区の「川端」(NO.28)や岐阜県郡上八幡の「カワド」(NO.34)のように用水路の水を生活に利用する知恵が岡山県にもありました。岡山県を流れる一級河川「旭川」の扇状地帯には豊富な水を利用した用水路が張り巡らされています。各用水路を流れる水量は本当に豊かで、香川県人からするとうらやましい限りです。こうした風景を見ていると、山や川の恩恵というものは計り知れないものがあると改めて感じます。その旭川から引いた用水路「祗園用水」や「中井川」「出屋敷川」と呼ばれる用水路に「川市」は今でも点在しています。「川市」とは家の内部から直接用水路に降りられるように階段状になった空間で、それはたいていの場合壁や屋根に囲まれた外壁の一部が用水路の側に張り出し、出窓状の外観を形成しています。
「川市」に関する文献は少なく、WEB検索でも2~3の記事しかヒットしません。言葉としてほとんど知られていないのではないでしょうか。数少ない記述のひとつ「中井川・出屋敷川の川市 ― 門脇正彦」には川市のことが次のように記されています。

『生活用水として利用するため、雨が降っても心配ないように屋根囲いをして、屋敷の一部として利用していた。朝の洗顔、食器洗い、洗濯物のすすぎ、風呂水等日常生活全般にわたって使用する重要な場であった。汚れた水は川下の人のことを考えて流さないように配慮し、洗濯物の大きな汚れなどは井戸場で落としてからすすぎをしていた。風呂水にも流水の方が井戸水より太陽熱で温められているので燃料の節約になるし、使った風呂水(汚水)は溜めておいて、畑の作物のしめりとして利用していた。』
出典:https://townweb.e-okayamacity.jp/nakai/nakaigawa_kawaichi.htm(2017年8月2日)

「屋根囲い」は敷地境界線をはみ出して設置される訳ですが、それも地域のおおらかなルールで許容されていたのでしょう。水の豊かな地域ならではの生活の知恵と文化、そしてその行為のためにつくられる建築そして風景。ローカリズムを表現するかたちとして未来に残したいもののひとつです・・・。


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〔工事現場紹介〕登録文化財 「総本山善通寺中門保存・修理工事」


 四国霊場第七十五番札所「総本山善通寺」の東院にて中門の保存・修理工事が行われています。古くなった部分を取り除き、新しい木材を接いで再生できるのは木造建築だからこそできる技です。
 屋根の内部に放射状に差し込まれた丸太は「桔木」と呼ばれる軒の深い社寺建築ならではの部材です。梃子の原理を利用して瓦屋根の軒先を支えます。瓦葺きの下には約1ミリの厚みの杉板を敷込みます。竹釘をトントンと打ち込む音から「とんとん葺き」と呼ばれる伝統的な工法です。雨水の浸入を防ぐ防水シートの役割を果たし、この上に引掛桟を打ち、瓦を固定していきます。修理にあたっては、門を丸ごと持ち上げて作業が行われました。新しい土台の据付が終わると、今度は元の位置まで下ろします。ミリ単位で少しずつ、全員が息を合わせて水平に下ろしていきます。現在、現場では9月下旬の完成に向けて瓦葺きが進められています。ご参拝の際にはぜひ生まれ変わった中門もご覧ください。


現場名:総本山善通寺中門保存・修理工事
場所:香川県善通寺市善通寺町
構造:木造
施工:(株)菅組
棟梁:山口宏己(菅組)

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〔大工のはなし〕第6回『近くの山の木で』


しっくりと手に馴染む大工道具の柄。上の写真は鑿や釘を打つ時に使う玄能です。右側は一般的なもので、左側は特注の頭に手作りの柄を付けて長年愛用しているもの。柄の素材は近くの山のグミの木で作りました。グミの木は年輪が詰まっているため粘り強く、しなやかな弾力は打ち込んだ時の衝撃を和らげてくれます。また、芯の部分を使うことでさらに強度が増します。曲がり具合や節の位置など、どこを伐り出すかは自分のクセや好みに合わせて選びます。ひとつとして同じものがない、大工の個性が光る一品です。

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〔information〕


仲南の森
大黒柱伐採ツアー

今年で 年目を迎える讃岐の舎づくり倶楽部の恒例イベント「大黒柱伐採ツアー」を今年も開催します。
実際に新築する家の大黒柱になる木が、住まい手さんご家族の見守る目の前で林業家 豊田均氏の手によって伐り倒されます。樹齢100年近くの木が新しい役割を担う瞬間です。
ご見学のみ、お友達と一緒になど、お気軽にご参加いただけます。迫力の伐採現場の空気を一緒に体感してみませんか?

日時・・・・・2017年11月5日(日) 9時30分 ~14時
場所・・・・・仲南の森:林業家 豊田氏の森(香川県まんのう町 )
参加料・・・・1,000円/人(お弁当・保険料・バス代等含む)
問い合わせ・・TEL:0875-82-2988 FAX:0875-82-2939

仁尾一齣

賀茂神社 秋季大祭:法被を着た担ぎ手たちが、ちょうさを盛大に担ぎ上げる



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